“決めつけない”ほうが
フットサルは楽しいと気づいた誰よりも頑張り屋さんで、努力家。スポーツ万能でなくても、スポーツを心から楽しむ術を知っている。フットサルを始めて4年目。ガッタス・ブリリャンチス H.P.の“ボランチ”役として、チームのバランスを保つ舵取り役として、欠かせぬ存在の彼女は、本業での過密なスケジュールの合間を縫ってフットサルに熱中する。その原動力は、甲子園に恋する球児のような、“青春”フットサルへの無我夢中な気持ちだった――。
――8月はミュージカル『リボンの騎士』で2役を演じ、公開中の映画『スケバン刑事』ではアクションにも挑戦。もちろん『美勇伝』としてもCD発売やコンサートツアーなど。他にも数え切れないくらいの仕事が同時進行の中で、石川さんはフットサルもしっかり頑張っています。石川:もちろん大変だと思うことはありますけど、それだけいろいろなことにチャレンジさせてもらっている分、やりがいも感じています。ただ、今年は本当にたくさんの仕事をさせてもらっていて、時間的だったり、体力的だったりの理由で、フットサルの練習に思うように出られないことが多いのが残念ですね。でも、その分、忙しい時でもできるだけサッカーの試合を見たりするなどして、常にフットサルに対しても意識を持ってました。特に今年はW杯があったので、たくさんサッカーの試合を見ましたね。実際にボールに触れる機会は少なかったかもしれないけれど、自分の中ではいつもフットサルが身近な存在でした。
――サッカーの試合って、どういう視点で見ているんですか?石川:最初の頃は応援しているチームが勝った負けたといったファンの視点で見ていたかもしれないけれど、今はテクニックある選手のドリブルで突破していくプレーとか、チームとして意図あるパスを繋いでゴールを決める連係プレーみたいに、プレーひとつひとつや選手個々の細かい動きに注目して見るようになりましたね。ドリブルのうまい選手なら、その足や体の動きをよく見て、「自分のプレーに活かせないかな?」と思いながら何度も繰り返し見たりしています。
――チャンピオンズリーグやW杯の試合を見ているという話ですが、最近見た試合の中で印象深いのはどんなプレーでしたか?石川:チャンピオンズリーグやW杯というのはサッカー選手にとって最高の舞台。だからこそスーパープレーがたくさん生まれたし、そういうシーンは今でも強く印象に残っています。その中でも特に印象深かったのは、ポジションにとらわれない動きで相手を打ち負かすプレーですね。例えば、自分たちの攻撃のチャンスになった時に、ディフェンスの選手が思い切って攻め上がってゴールを決めた時なんか、「すごい!」って思いました。サッカーというのは「攻撃はFWがして、守備はDFがする」という先入観が、初心者レベルではどうしてもあるじゃないですか? でも、世界のトップレベルのサッカーでは攻撃も守備もポジションに関係なく全員で行う当たり前であることが、世界最高レベルのサッカーを見ているとすごく印象的ですね。
――そういう動きや考え方は、フットサルに通じるものがありますよね?石川:やっぱりサッカーの試合を見ながらも、頭の中にはフットサルが常にあるからそう思うのかな? 私も「フットサルと同じだ」と思いながら見ていました。ポジションに関係なく流動的に自由に動くプレーを見て思ったことは、「もしかして今のガッタスはまだ固定観念が残っているんじゃないのかな?」ってこと。もちろん私自身がそうなんですけど、前のポジションの人が攻撃、後ろのポジションの人が守備、という形にまだ少しこだわりすぎているかもしれないって感じたんです。
――でも、石川さんは前のポジションでも、後ろのポジションでも起用されますよね? どちらで起用されても、一方に偏ることなく、積極的に攻守に参加しているように感じます。目立たないけれど、チームのバランスを実にうまく舵取りしているように見えます。石川:最初の頃は自分の中でも知らず知らずのうちに、試合中での自分の役割を決めつけていた部分があったと思う。でも、サッカーの試合を見たり、フットサルの練習の中で考えながらプレーする中で、「決めつけないほうが楽しい」ということに気づいたんです。固定観念を持ったままだと、「自分は守備の人」というふうに、プレーの選択の幅が狭まって楽といえば楽。だけど、試合中に「今、私が攻め上がればチャンスになる」と思った時に思い切ってゴール前まで走り込むことで、得点のチャンスも広がるし、自分自身も楽しくなるんです。逆に、攻撃のポジションでも、常に守備の意識を持っておけば「ここはカバーに回ったほうがいい」というアンテナが働くし、みんながそういう意識を持っていれば、よりピンチは少なくなると思う。去年くらいから試合で起用されるポジションが攻撃的だったり守備的だったりする中で、その対応を常に考えていくうちに自然と柔軟性がついたのかもしれませんね
――ガッタスのメンバーも、石川さんがコートに入ると「いい流れに変わる」と言っています。石川:監督からは特に指示されているわけではないんですけど、自然とカバーリングに回ったり、フォローする動きをしたりしてますね。もちろんボールをたくさん触ったり、シュートを打ったりするのがフットサルの楽しさだと思うんですけど、空いた守備のスペースを埋めたり、サイドに開いてパスコースを作ってあげたりするというのも、フットサルの楽しさだと思っています。結果的にチームの勝利に結びつくなら、攻撃でも守備でもカバー役に徹することも自分としては満足できますね。
――でも、「もっとゴールを決めたい」と思う時もあったりしませんか?石川:ガッタスとして3年以上一緒にやってきた中で、みんな自分の役割というのが見えてきた。チームの勝利のために、コート上で何をすべきかを各自がわかってきたと思う。もちろん私もゴールを決められるならどんどん決めたいし、チャンスがあれば今でもシュートを打つつもりでプレーしています。でも、シュートに関して、私よりもシュート力のある選手がガッタスにはいる。だから、私はそういう子がもっとシュートをたくさん打って、たくさんゴールを決められるようにチーム全体のバランスをとったり、チャンスを作るためのサポートをする。それがチームの勝利に繋がる最善の選択だと思ってプレーしています。でも、もしも監督に「今日からお前はゴールを決める役割だ」と言われたら、いつでもゴールを決められるように普段のシュート練習なんかでも意識して練習していますよ。ガッタスは「監督に言われたことをやっていればいい」という段階はもうとっくに過ぎて、もっともっと進化してるチームなんですよ。
――5thステージも目前です。ガッタスは逆転で年間チャンピオンになるためには、もう負けられません。石川:もちろん出場する大会での優勝、そしてスフィアリーグの年間総合優勝は、目標のひとつです。でもガッタスはそこが最終目標じゃないチームなんです。もっともっとひと回りもふた回りも、チームとして進化していくことがチームの目標。17日の大会も優勝を目標に戦うけれど、ただ勝てばいいとは思っていません。試合をする中で、ガッタスが今以上にどんどん成長していくことが一番の目標ですね。
――石川さん個人の、フットサルに関しての今後の目標は石川:ちょっと前ですけど、夏の高校野球をテレビでよく見ていたんです。甲子園で試合をする選手たちはがむしゃらで一生懸命で、真剣だった。その姿に心から感動しました。甲子園球児を見て、「青春だな」って思った。真夏の灼熱の中で、毎日試合をして……本当に過酷なのに、ひたむきにプレーする姿が「青春だな」って感じた理由だと思う。今、私がフットサルをやっていて感じるのも、「青春だな」ってこと。コンサートやミュージカルが連日続いて、「体がボロボロだよぉ」って思うんだけど、ガッタスとしてユニフォームを着た途端、真夏のお台場のコートでも無我夢中で走り回れたりする。そういうことって、誰でも経験できることじゃないからこそ、今の「青春」を感じるフットサルを心から楽しみたいですね。ガッタスとして3年以上フットサルを続けてきて、いろんなことを経験して、いろんなことが体に染み付いていると思います。たとえ日々の練習に毎回参加できなくても、3年かけて身に付けたものは簡単にはなくならないと思う。残りの2つの大会は結果を求めるのと同じくらい、その3年間の経験を活かしてフットサルを楽しみたいですね。あとは、年末に日本で開催されるトヨタカップ世界クラブ選手権を、ぜひスタジアムで見たいですね。ロナウジーニョやメッシのような世界のスーパースターのプレーを間近で見れたら、もっといろんなことが勉強できると思うから。ガッタスがスフィアリーグ年間王者になったら、ご褒美として見せてくれないかな? (笑)。
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